前回のピロリ菌の話しの続きです。
除菌治療が失敗した場合はどうしたらいいのでしょうか。一般にボノプラザン(タケキャブ)を使用しても10%未満の方は除菌に失敗してしまいます。この原因として最も多いのは、除菌薬に含まれている抗生剤であるクラリスロマイシンの耐性があげられます。近年ではピロリ菌の約30%はクラリスロマイシン耐性と言われており、その場合はメトロニダゾールを使用した2次除菌治療を行います。2次除菌の除菌成功率は約98%と言われており、1次除菌のときと同様に除菌後4週以降に尿素呼気試験を行い、除菌が成功したかどうかを判定しています。
1次除菌、2次除菌療法を行っても除菌に至らないことは非常にまれですが、このような除菌難治例に対して、日本ヘリコバクター学会のガイドラインではグレースビットを使用した除菌治療などを推奨しています。しかし現時点で保険適応にはなっておりませんので、主治医とよく相談した上で治療を選択していく必要があると思います。
最後にですが除菌治療後に逆流性食道炎が悪化することがあります。これは胃粘膜萎縮が高度に進行し、胃酸が減少していた場合にみられる現象で、例えば十二指腸潰瘍の方など胃酸過多の場合においては、除菌によって胃酸は減少するため、逆流性食道炎の悪化はみられません。すなわち胃粘膜萎縮が胃全体に広がっていると除菌により逆流性食道炎悪化の可能性があることは留意しておく必要があると思われます。