アニサキス症を聞いたことがあるでしょうか。最近テレビなどでも放送されることも多く、ご存じの方も多いかと思います。アニサキスは寄生虫(線虫)の一種であり、線虫の成虫はクジラ、イルカなどの消化管に寄生していますが、成虫が生んだ卵が海水中で発育して幼虫になり、その幼虫を魚介類が摂取し、その魚介類をヒトが摂取することで、人体に侵入します。成虫は長さ2-3cm、幅0.5-1mmくらいの白色の糸のような形態をしています。
サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生したアニサキスをヒトが摂取し、虫体が胃の壁にかみつくことでアニサキス症が発症します。新鮮な生の魚介類を食べることが多くなったこともあり、アニサキス症は年々増加しています。アニサキスに感染すると食後数時間後にみぞおちの痛みに襲われますが、症状が軽い場合もあれば、激痛となり、吐気を伴うこともあります。この症状は虫体が胃の壁にかみついたことで起こる直接的な症状ではなく、かみついた虫体に対するアレルギーによって起こると言われています。またアニサキスはヒトの体内に入ると約1週間で死んでしまいますので、全く無症状の人もいます。胃に感染することが多いものの、小腸や十二指腸などの全消化管に発生しうる病気です。生の魚介類接種後に腹痛がみられたら、医療機関を受診し、アニサキス症が疑われた場合は胃カメラを行います。検査で虫体が確認できれば、内視鏡的に除去することで、症状は速やかに改善していきます。腸アニサキス症では腸閉塞や腸重積を来し、外科手術が必要になることもあるため、胃カメラでアニサキス虫体が見つらなかった場合も注意が必要です。
感染を予防するにはどうしたらいいでしょうか。一般に加熱(60℃以上で1分)、冷凍処理(-24℃以下で24時間)でアニサキスは感染性を失うと言われています。生の魚介類を食べることを避けるといっても、おいしい生魚を食べたいときもあります。生の魚を摂取するときは、アニサキスは目に見える大きさのため十分な注意を払いつつ、刺身用に調理する場合は魚が新鮮なうちに内臓を取り出すなどの工夫も大切です。