健診の腹部エコー検査などで膵臓に嚢胞(のうほう)が見つかった場合にどうしたらいいでしょうか。
一般に嚢胞とは内部に水成分などを含んだ袋状のものを言います。肝臓や腎臓にも嚢胞ができますが、膵臓にできる嚢胞はがんになる可能性があるものも含まれるので注意が必要です。膵嚢胞は急性膵炎の治療後や外傷、術後にできる非腫瘍性嚢胞と、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や粘液性嚢胞性腫瘍(MCN)、漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)などの腫瘍性嚢胞の2つに分類されられます。今回は腫瘍性嚢胞の中で最も多く、がんになる可能性もあるIPMNについて説明したいと思います。
IPMNは60歳以上の1000人に1人程度に見つかるとされ、決してまれな病気ではありません。膵臓の中には膵管という膵液の通り道があり、木の幹に相当する「主膵管」から発生する主膵管型IPMNと、木の枝に相当する「分枝膵管」から発生する分枝膵管型IPMNに分けられます。主膵管型IPMNはがんになる可能性が高いため、基本的には手術の対象となります。一方で分枝膵管型IPMNががんになる可能性は約2-3%と低いため、多くの場合で定期的に経過観察を行います。
膵嚢胞がみつかった場合は、簡単にできる腹部エコー検査の他に、CT検査やMRI検査、超音波内視鏡検査(EUS)などの画像検査を行い、主膵管型IPMNと分枝膵管型IPMNのどちらかに該当するかを判定します。分枝膵管型IPMNのうち、嚢胞の壁に5mm以上の結節があったり、1cm以上の主膵管拡張がある場合などは、がん化する可能性が高いと言われており、これらの所見がないかも一緒に判断していきます。多くの分枝膵管型IPMNはがん化の可能性は低いと判断されますので、その場合は嚢胞の大きさに応じて、定期的に画像検査行っていきます。患者さんの年齢や症状、合併疾患などによっても検査内容や間隔は変わってきますので、主治医と相談の上、計画的に検査を行っていくことが重要です。