前回炎症性腸疾患とワクチン接種について、接種時期や生ワクチン、不活化ワクチンなどのお話をしましたが、今回はその続きととして、妊娠・出産とワクチンについお話したいと思います。
炎症性腸疾患の治療において、妊娠・授乳中も適切な治療を継続することが、母および子供の健康を守ることにつながるという考え方が現在は主流です。一方で妊娠初期に風疹にかかると子供に白内障や緑内障などの眼症状、先天性心疾患、感音性難聴などの先天性風疹症候群を発症するリスクがあります。そのため妊娠希望の女性やパートナーは、風疹抗体価が低値であれば、風疹ワクチン接種することが推奨されています。また水痘や麻疹に罹患すると重症化するリスクもあり、これらの生ワクチン接種が必要な場合、妊娠中のワクチン接種は基本的には避けるべきです。免疫抑制療法予定があったり治療中の患者さんは、主治医としっかり相談した上で、治療は継続しつつ、妊娠前に計画的にワクチン接種を行う必要があります。一方で不活化ワクチンは生ワクチンと異なり胎児に感染を起こすことはないため、必要に応じて接種をすることが可能と言われています。
また妊娠中期以降で生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラなど)の治療を受けた女性の出生児は、出生6ヶ月頃までは生ワクチンの接種を控えることが勧められています。一方で免疫抑制療法の中でも生物学的製剤以外のステロイドやアザチオプリンなどの治療を受けた方の出生児は、一般的な生ワクチン、不活化ワクチン接種スケジュールでワクチンを接種することが可能です。
最後に授乳中に関しては、母親に関しては生ワクチン、不活化ワクチンともに接種可能で、母乳の安全性に影響を与えることはないと言われています。
2回にわたり、炎症性腸疾患とワクチンについて説明しましたが、分からない点も多いかと思います。主治医としっかり相談し、ワクチンについて考えて頂ければ幸いです。