前回に引き続き、今回も新型コロナウイルス感染症ついてですが、今回は臨床経過についてお話ししたいと思います。
一般に症状がある方が約70%、無症状のまま経過する人が約30%と言われており、発熱、咳や咽頭痛などの呼吸器症状、頭痛や倦怠感などインフルエンザに似た症状を訴える方が多いと言わています。発熱や咳、息切れのいずれかを認める方は70%と高く、下痢や嘔吐などの消化器症状は20%未満と低くなっています。また味覚や嗅覚障害は症状の頻度としては8%と低いものの、味覚や嗅覚障害があれば、新型コロナウイルス感染症の可能性が高いことが知られています。新型コロナウイルス感染症の患者様と接した個人的な印象としては、高熱や咳、全身の疼痛などがインフルエンザより強く、かなりきつそうな印象を受けます。味覚障害や嗅覚障害は発症後遅れて出現する方が多いと思われます。
一般に発症から1週間程度で症状が改善する人が80%と多く、この方は軽症~中等症Iにあたります。ただし中等症Iでは呼吸困難や肺炎所見を伴うため、入院の上慎重に観察することが望ましいと思われます。また15%の方が発症から1週間程度で酸素投与が必要となり(中等症II)、さらに集中治療室で治療が必要な重症へと移行する方がいます。軽症~中等症の分類において、酸素飽和度に限ると、軽症ではSpO296%以上、中等症Iで93%~96%、中等症IIで93%以下となっています。
重症化のリスク因子として、65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満(BMI30以上)、喫煙などがあげられており、これらに該当する方は注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症は経過とともに両肺に特徴的な肺炎像をおこすことが知られていますが、症状が軽い方でもCTをとると肺炎像を認めることがあります。また肺以外にも様々な臓器に合併症を起こすことがあります。国内での調査では入院患者の約2%に脳梗塞や心筋梗塞、深部静脈血栓症などの血栓塞栓症を合併したと報告されています。
また新型コロナウイルス感染症が治癒したとしても倦怠感や呼吸困難などの後遺症が残ることが知られています。味覚・嗅覚障害の改善率は退院後1ヶ月でそれぞれ84%、60%と報告されています。新型コロナウイルス感染症発症後半年の時点で約80%は元の健康状態に戻ったと自覚すると言われていますが、少しでも後遺障害が残ると生活の質が低下し、不安や抑うつ、睡眠障害に悩まされることも問題となります。
次回は最終編、治療についてです。