炎症性腸疾患の患者様は年々増加しています。炎症性腸疾患とは小腸や大腸を中心に消化管に慢性的な炎症を生じる病気で、クローン病と潰瘍性大腸炎の2つに分けられます。
かつては内科治療の選択肢も少なく、厳格な食事制限を行い、致し方なく外科手術になることも度々ありました。炎症性腸疾患の炎症の原因はまだ完全には解明されていないものの、近年TNFαが病因に重要な役割を果たしていることが判明し、様々な抗TNFα抗体製剤が使用され、治療が大きく変化してきています。それ以外にもIL-12/23をターゲットにした抗体製剤や細胞接着分子をターゲットにした治療薬など多くの薬が発売されています。
少々難しい話をしてしまいましたが、炎症性腸疾患は炎症をおさえて症状をよくすることは可能となってきたものの、症状再燃のリスクは常にあり、完治することはありません。そのため患者様は長期にわたって病気と付き合っていかなければなりません。
自身が大学で潰瘍性大腸炎の研究を行い、その後勤務した病院でも多くの炎症性腸疾患の患者様の治療を担当してまいりました。患者様の病状は様々で、生活様式も異なっており、患者様一人一人にあった治療法を選択していかなければならない難しさとやりがいがあります。また一生涯かかえなければならない病気であり、患者様の悩みを共有し、共に歩んでいかなければなりません。
日々医学は進歩しており、我々も勉強していく必要があります。クリニックのため総合病院とは異なりできる範囲も限られていますが、これからも炎症性腸疾患の患者様と向き合っていければと思います。