胃がんや大腸がんのことはよく知られていますが、胃と大腸の間にある小腸に腫瘍はできるのでしょうか。
小腸腫瘍は全消化管腫瘍の約3%程度と言われており、非常にまれな病気です。良性腫瘍は脂肪腫や平滑筋種、悪性腫瘍であればがんや神経内分泌腫瘍、悪性リンパ腫、GISTなどが知られています。胃カメラや大腸カメラで届かない部位で、腫瘍ができることもまれなため、これまで小腸の検査を行うことはあまりありませんでした。そのため腫瘍が大きくなり、嘔気や嘔吐、腹痛などの症状が出現してはじめて、CT検査などで腫瘍が発見されていました。
近年カプセル内視鏡やバルーン内視鏡の登場により、小腸をすべて観察することができるようになりました。カプセル内視鏡とは薬より大きなカプセルを飲み、消化管の運動とともにカプセルが進みながら画像を撮影し、腰に取り付けたレコーダーに記録します。これを後でコンピュターで動画として解析します。検査は外来で行うことが可能で、朝外来に受診していただき、カプセルを飲んだ後、カプセルが大腸に到達するまで約6~8時間程度経過をみます。カプセルが胃を超えてしまえば、一時的な外出や食事も可能となり、夕方には検査が終了となります。ここで問題となるのが、小腸内にカプセルが残ってしまうことで、「滞留」といいます。多くは腫瘍や炎症などのため小腸が狭くなっている(狭窄)ことが原因で、カプセルが自然排出できないため、バルーン内視鏡でのカプセル回収や、場合によっては外科手術が必要になります。そのため小腸の狭窄が疑われる場合は、時間がたつと自然に消化管内で溶けてしまうダミーのカプセル(パテンシーカプセル)を事前に飲んでいただく必要があります。また小腸の狭窄は強い方やペースメーカーを植め込んでいる方、嚥下障害がある方、妊婦さんはカプセル内視鏡ができません。
一方、バルーン内視鏡はカプセル内視鏡で腫瘍や出血性病変があり、後述する治療や処置が必要な場合などに行います。バルーン内視鏡は病変の部位によって、口からか肛門からかいずれかの方法で内視鏡を挿入し、腫瘍に対しては組織の検査、出血病変に対しては止血処置、ポリープに対しては内視鏡的切除を行ったりします。胃や大腸の奥まで内視鏡を挿入するため、時間もかかり、患者さんの負担も大きいため、多くは入院で検査を行います。
ということで今回は小腸内視鏡検査について説明しました。次回は小腸検査を行う原因として多い消化管出血について説明します。