胃食道逆流症(GERD)は主に胃酸が食道へ逆流することにより、胸やけや呑酸症状を感じたり、食道の粘膜が炎症を起こしたりする病気のことを言います。胸がつまるような痛みを感じたり、のどの違和感や慢性的に咳嗽が持続する患者さんもいらっしゃいます。胃食道逆流症は食道に炎症を起こす逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)と、炎症を起こさず、症状のみを訴えられるNERD(非びらん性胃食道逆流症)に分けられます。
日本においてGERDの約60%はNERDと多く、NERDの多くが逆流性食道炎と比べて、症状が軽いというわけではありません。NERDは胃酸を抑える薬であるPPIやPCABに対する効果が約50%と低く、女性や非喫煙者、やせている人に多いなど逆流性食道炎とは臨床的な特徴が異なることもあり、逆流性食道炎とは病態の違いも指摘されています。胃から食道への酸逆流はそこまでないものの、食道知覚過敏が関与し症状が出現する逆流過敏性食道や、より酸逆流がない機能性胸やけが、NERDの中に含まれ診療されていることが原因とも言われています。これらは臨床的に区別することは難しく、治療抵抗性GERDに対しては六君子湯やアコファイドなどの消化管運動改善薬やアルギン酸などの薬を併用したり、複式呼吸などの認知行動療法を行うことが有効と言われています。
生活習慣の改善としては、食べ過ぎや高脂肪食、就寝前の飲食を避け、ダイエットを行うことや、上半身を少し上、頭を高くして寝ることなどが有用とされています。これらの治療で自覚症状が改善した場合、治療を継続するかは症状の程度や患者さんのライフスタイルなどを考慮し、患者さんごとで考える必要があります。また最近では患者さん自身の判断で、症状が出た、あるいは出そうと感じた時点で、薬を飲み始めて、よくなったら中止するという「オンデマンド療法」という治療方法も考えられており、主治医の先生とよく相談し、自分にあった治療を考えていっていただければと思います。