慢性膵炎という病気を聞いたことがあるでしょうか。膵がんや急性膵炎は聞き覚えのある方もいらっしゃるかと思います。今回は腹痛を繰り返し、進行性の病気である慢性膵炎についてお話したいと思います。
慢性膵炎は膵臓で作られる消化酵素が活性化し、自分の膵臓をゆっくりと溶かす病気です。最も多い原因は長期間の大量飲酒ですが、原因が分からない場合もあります。男性が女性の約3倍多い病気で、1日の飲酒量が日本酒で4合弱、ビールで中瓶4本の多飲者に慢性膵炎の危険性が高くなります。
慢性膵炎の典型的な症状は上腹部痛や背部痛で、アルコールや脂肪などの暴飲暴食で悪化しやすいと言われています。初期には強い腹痛発作を繰り返すものの、進行すると消化吸収不良による体重減少や糖尿病があらわれてきます。
病歴や症状から慢性膵炎が疑われたら、血液検査でアミラーゼやリパーゼなどの膵酵素の値を測定し、腹部超音波検査やCT、MRI検査などを行って診断します。これらの検査で上腹部痛を起こす病気である膵がんや胆石症、さらに胃カメラを行うことで胃潰瘍や胃がん、機能性ディスペシアといった病気との区別を行います。
治療に関しては腹痛を主な症状とする時期は禁酒と禁煙、脂肪を制限した食事療法が重要で、蛋白分解酵素阻害薬や膵消化酵素薬、胃酸分泌抑制薬などの薬物療法を一緒に行います。腹痛が消失し、消化吸収障害が出現する時期には脂肪制限を緩和しますが、糖尿病の合併には注意が必要です。糖尿病を合併するとインスリン治療を行います。また慢性膵炎の約半数の患者さんに膵臓に石(膵石)ができます。膵石ができる原因ははっきりしていないものの、慢性的な膵臓の炎症により膵液が膵臓から排出できなくなり、カルシウムで加わることで石ができると言われています。膵石に対しては衝撃波で膵石を砕いたり、膵液の流れが悪くなった場合は内視鏡治療を行ったりします。
最後に慢性膵炎では膵がんで亡くなる人が多いことが分かっています。きちんとした食事療法と薬物療法で慢性膵炎の進行を食い止める必要があります。上腹部痛を繰り返すときは、専門医に相談、各種検査を行い、早期に診断し、治療を行うことが重要です。