これまでに数回に分けて、便秘症や過敏性腸症候群に対する食事療法や生活習慣の改善などについてブログに掲載してきましたが、今回は便秘症の治療薬についてお話したいと思います。
2017年の慢性便秘症ガイドラインで便秘症の治療薬として浸透圧性下剤が有用であると記載されており、これまでマグネシウムを含む塩類下剤である酸化マグネシウムが広く使用されてきました。しかしながら、高齢者や腎機能障害者では高マグネシウム血症のリスクが生じることや海外ではポリエチレングリコール(PEG)が治療の第一選択薬となっていることから、近年モビコールの使用頻度が増加してきています。この薬を使用すると浸透圧により保持された水分が大腸に届き、大腸内の水分量が増加します。その結果、便が軟化、便容積が増大し、大腸の蠕動運動が活発化することで、滑らかな排便が促されると言われています。実際使用してみると小児でも使用されていることもあり、副作用も少ない印象を受けます。
モビコールより少し前に発売された上皮機能変容薬であるルビプロストン(アミティーザ)やリナクロチド(リンぜス)、エロビキシバット(グーフィス)と併用することもよくあります。リンぜスは消化管知覚過敏を抑制し、腹痛が軽減することと言われており、便秘型の過敏性腸症候群に有用といえます。またグーフィスは大腸運動を促進する作用があり、効果発現までの時間が約5時間と短時間であることが知られています。それぞれの薬剤に特徴があり、また下痢などの副作用もあることから、患者様自身にあった薬剤を選択していくといいでしょう。
センナやセンノシドなどの刺激性下剤に関しては、すぐに排便が促されることから患者さんの満足度も高いのですが、依存性や習慣性、だんだん効果が薄れるといった薬剤耐性の問題もあり、頓用程度にとどめることが重要です。その他にも大黄甘草湯や麻子仁丸、桂枝加芍薬薬大黄湯などの漢方薬、ガスモチンやガナトン(イトプリド)、大建中湯などの腸管運動府活薬など便秘症に対する薬は多くあります。。
便性状や排便回数の正常化を目指し、患者さんの満足度を改善することが治療のゴールとなります。精神・心理的要因で難治化している場合もあるため、主治医としっかりコミュニケーションをとり、時間をかけて治療薬を選択していく必要があると思われます。