今回は前回お話できなかったクローン病の治療についてです。
クローン病の治療は潰瘍性大腸炎と同様に5-ASA製剤の内服を行いますが、栄養療法が非常に重要になります。具体的には3大栄養素(蛋白質、炭水化物、脂質)のうち、脂質の多い食事を避け、食事の回数を減らした上で、脂質の少ない成分栄養剤(エレンタールやラコール)を摂取したりします。栄養療法は継続するのがなかなか難しく、そのため症状が悪化し、昔は入院の上、絶食、点滴だけで栄養を補う治療(中心静脈栄養)を数多く行っていました。またクローン病もステロイド剤の内服を行うことがありますが、症状は改善するものの、寛解状態を維持することは難しく、ステロイド剤の副作用の観点からも、日本では栄養療法が治療の中心になってきました。
潰瘍性大腸炎の治療の中でもお話した抗TNF-α抗体製剤(レミケード、ヒュミラ)が発売されてから、クローン病の治療がこれまでとがらっと変化してきました。最近抗IL12/23抗体製剤(ステラーラ)も使用できるようになりましたが、これらの治療を早期に使用することで、症状を改善し、寛解状態を維持することも可能となり、腸の狭窄(腸が狭くなること)や瘻孔(腸にできた深い潰瘍のため、腸や、他の臓器、皮膚などと通路ができた状態)による手術リスクを回避し、絶食のための入院治療も減らすことができるようになりました。またクローン病によくみられる痔瘻にも非常に有効です。
抗TNF-α抗体製剤は特効薬といえる薬で、早期に使用するtop down療法の有効性が高のは分かっていますが、やはり治療の中心は栄養療法であり、栄養療法を抗TNF-α抗体製剤と併用して行うことで治療効果が上昇すると言われています。クローン病は潰瘍性大腸炎のように急激に症状は変化しないものの、徐々に病状が悪化していき、狭窄や瘻孔で手術が必要になることがある病気です。症状がなくともこれらの治療を継続し、定期的に通院することが大切となります。
潰瘍性大腸炎は5-ASA製剤やステロイド剤、クローン病は栄養療法の加え、抗TNFα抗体製剤が治療の中心と2者で異なっています。いずれもストレスをためすぎず、暴飲暴食をしないといった基本的な注意を払いつつ、適切な治療を選択していきましょう。