前回の続きで今回は治療編です。
潰瘍性大腸炎もクローン病も早期に寛解状態にもっていき、長期間維持することが重要で、そのための治療計画を立てていきます。
潰瘍性大腸炎は炎症の強さから「軽症」、「中等症」、「重症」、「劇症」に、炎症の範囲から「直腸炎型」、「左側大腸炎型」、「全大腸炎型」に分類され、それぞれで治療方針が異なってきます。いずれのタイプの患者様もリアルダやペンタサ、アサコールなどの5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤が治療の中心となり、坐剤や注腸製剤など肛門から5-ASA製剤を注入する治療を併用することもあります。
5-ASA製剤で治療効果が不十分なときは、ステロイド剤の内服を行います。ステロイド剤は非常に有効性が高いものの、長期に使用することで様々な副作用が起こすことがあり、期間を限定して使用します。時々ステロイド剤をやめると症状が悪化するため、ステロイド剤を長期間使用し、依存状態となっている患者様を見ることがありますが、適切な治療を行なっているとはいえません。このような依存状態になっている患者様には免疫調整薬(イムラン、ロイケリン)の内服を行います。以前新型コロナウイルス感染症との関連のブログの中で、ステロイド剤は他の薬剤と比較し、「新型コロナウイルスに感染してしまうと、重症化リスクが高くなる」とお話しましたが、そのような観点からもステロイド剤を漫然と使用することは避けた方が望ましいと思われます。
その他にもステロイド依存状態やステロイド剤で症状が改善しない場合などに対して、近年抗TNF-α抗体製剤(レミケード、ヒュミラ、シンポニー)を使用することが多くなり、最近では抗IL12/23抗体製剤(ステラーラ)や抗α4β7インテグリン抗体製剤(エンタイビオ)、JAK阻害剤(ゼルヤンツ)などが使用できるようになりました。様々な薬があり、どれを使用するか判断に悩むことが多いのが実情です。使用にあたってはきちんとした専門医のお話を聞き、患者様の病状やライフスタイルにあった治療法を選択することが大切となります。
また潰瘍性大腸炎は長期間罹患することで大腸癌を起こしやすくなります。症状が安定しているときでも少なくとも2年に1回は大腸内視鏡検査を行い、状態を確認することが重要です。
ということで潰瘍性大腸炎だけでこれだけ長くなってしまいました。クローン病編は次回お話したいと思います。