
これまで炎症性腸疾患について、①炎症性腸疾患と向き合うこと、②炎症性腸疾患と妊娠・出産、③新型コロナウイルス感染症と炎症性腸疾患、④新型コロナウイルスワクチン接種について~炎症性腸疾患との関わりを中心に~ の4つの題目でブログを作り、お話してきました。
患者様が気になるトピックスを中心としたブログでしたが、しばらくは炎症性腸疾患の2つの病気、潰瘍性大腸炎とクローン病の違いについて説明していきたいと思います。
今回は症状・診断編となります。
炎症性腸疾患ははっきりとした原因が分からず慢性的に腸に炎症を起こし、病状が悪い時期(活動期)と落ち着いているとき(寛解期)を繰り返す病気です。最近では病気のしくみが少しずつ解明され、遺伝や環境、腸内細菌の異常などの様々な要因が関わり、体内で免疫異常が起こり、病気が発症することが分かってきました。
症状としては潰瘍性大腸炎は血便、特に粘血便といわれるどろっとして血便を認めることが多いのですが、クローン病では血便を認めることはあまり多くありません。クローン病は発熱や体重減少、腹痛、倦怠感など全身症状がみられ、痔瘻などの肛門部病変が最初にみつかることも少なくありません。その他にも関節痛や皮疹など様々な症状を引き起こすことがあります。
血便などの症状が長期に続くときは大腸内視鏡検査を行えば、内視鏡所見だけで潰瘍性大腸炎はおおよそ診断可能で、組織を採取して調べる病理検査を行い、診断確定となります。一方でクローン病は全身症状が強くでるため、まずは血液検査やCT検査、大腸内視鏡検査などの検査を行います。クローン病が疑われれば、大腸のみならず小腸にも炎症がみられることが多いため、バリウムの検査(小腸造影検査)を行い、診断確定となります。また食中毒などによる感染性腸炎や、抗生剤や痛み止め(解熱鎮痛剤)などによる薬剤性腸炎など他の疾患と区別することも重要です。いずれも早期に診断し治療する必要があるため、炎症性腸疾患に詳しい専門医を受診し、検査予定を立てていくのが望ましいと思います。
ざっと簡単にまとめてみましたが、潰瘍性大腸炎とクローン病でこれだけ違いがあるものです。次回は治療編です。