
前回潰瘍性大腸炎に対する治療として、5-ASA製剤やステロイド、経口α4インテグリン阻害薬などについて説明しましたが、今回は治療難治例について説明したいと思います。
通常ステロイド依存例では免疫調整薬(イムラン、ロイケリン)を使用しますが、副作用の観点から使用できない場合や治療してもすぐに再燃するような場合がみうけられます。またステロイド剤で症状が改善しないステイロイド抵抗例もあり、これらでは難治例と判断し、数多くの治療法から、患者さんにあった治療を選択していく必要があります。
抗TNF-α抗体製剤(レミケード、ヒュミラ、シンポニー)、抗IL12/23抗体製剤(ステラーラ)、抗α4β7インテグリン抗体製剤(エンタイビオ)については3年前にもお話しさせていただきましたが、最近ではIL-23p19抗体製剤(オンボー、スキリージ)も使用できるようになり、その有効性がうたわれています。これらは点滴ないし自己注射製剤であるため、治療間隔や1回の治療時間、副作用について理解することや、自己注射であれば手技を覚える必要があります。そこで今回は、唯一の経口製剤であるJAK阻害薬について説明したいと思います。
JAK阻害薬にはゼルヤンツ、リンヴォック、ジセレカの3剤が潰瘍性大腸炎に対して治療可能です。抗TNFα抗体製剤でよくみられる免疫原生はないため、薬剤投与時の副作用や治療効果が徐々になくなってくるといった2次無効は少ないと考えられています。ゼルヤンツとリンヴォックは免疫調剤薬との併用ができませんが、経口薬であることから外来患者を中心に難治例で使用することが今後多くなってくると思われます。副作用として感染症、特に帯状疱疹の発生に注意する必要があり、高齢者には使用しにくい側面がありますが、潰瘍性大腸炎の患者さんの年齢層から異なっており、妊娠中や近いうちに妊娠を希望していなければ、非常に有用な治療法といえます。それぞれの有効性は若干違いますが、治療効果発現までが早いことも特徴の一つです。
多くの治療法があり、その中から自分にあった治療法を決めるのは大変難しいところですが、いずれの治療法にしても、病状や年齢、副作用、患者さんのライフスタイルなどを考慮し、主治医とよく相談の上、決めていくことが重要です。