
以前潰瘍性大腸炎に関しての治療をまとめてブログに掲載しましたが、あれから3年以上経過しており、当院でも潰瘍性大腸炎の患者さんも多く来院されるようになりました。今回改めて潰瘍性大腸炎に対する治療、最近の話題について触れたいと思います。
最近、治療目標を設定し、その達成に有無によって治療強化を行うといった「Treat to target(T2T)」という概念がうたわれるようになり、潰瘍性大腸炎においても、臨床的寛解のみならず内視鏡的寛解を治療目標に設定し、治療計画を立てていくことが必要になっています。
外来治療においては、炎症の強さから軽症、中等症、重症、劇症、炎症の範囲から直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分類し、それぞれで治療方針が異なってきます。いずれのタイプの患者様もリアルダやペンタサ、アサコールなどの5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤が治療の中心となり、坐剤や注腸製剤など肛門から5-ASA製剤を注入する治療を併用することもあります。
5-ASA製剤で治療効果が不十分なときは、ステロイド剤の内服をこれまで行ってきましたが、ステロイドを使用する前の治療として、経口α4インテグリン抗体製剤(カログラ)が最大6ヶ月間使用できるようになりました。免疫調整剤内服中の患者さん、妊婦や重症の肝障害の患者さんには使用できず、投与終了後の維持に関しての問題はあるものの、ステロイド剤の副作用を気にされる若年の方などには検討すべき治療法と思われます。また局所作用型のステロイドであるブデソニドを有効成分とし、MMXを用いて大腸全域で放出されるように設計された経口ブデゾニド製剤(コレチメント)も発売され、これまでのステロイド剤よりも副作用が少ないと考えられています。
ステロイド剤は短期間で使用すれば、現在も非常に有用な治療法であることは間違いありませんが、潰瘍性大腸炎の軽症、中等症症例に対する治療の選択肢が増えたことは非常にいいことと思われます。またステロイド剤を使用した場合の問題点として、ステロイド剤をやめると症状が悪化してしまうステロイド依存例や、ステロイド剤で症状が改善しないステロイド抵抗例の患者さんを早期に判断し、次の治療を行っていく必要があることがあげられます。ステロイド依存例はこれまで通り免疫調整薬(イムラン、ロイケリン)の内服を行っていますが、免疫調整薬の使用の前にはNUDT15遺伝子変異を測定し、骨髄抑制や脱毛などの副作用を治療前に予測することが必須となっています。
話も少し長くなりましがた、免疫調整薬で寛解を維持できない場合や副作用の恐れがあって使用できない場合など難治例の治療に関しては、次回お話ししたいと思います。