
今回は少し変わった胃炎である自己免疫性胃炎のお話をしたいと思います。通常ヘリコバクター・ピロリ感染でみられる萎縮性胃炎は胃前庭部から始まり、胃全体にに広がりますが、胃体部に高度の萎縮を認めるものの、前庭部に萎縮をあまり認めないといった逆転現象がみられることがあります。この現象、疾患を以前はA型胃炎、最近では自己免疫性胃炎と呼んでいます。自己免疫性胃炎は無酸で、高ガストリン血症を呈することが分かっています。高ガストリン血症を伴うため、胃神経内分泌腫瘍(NET)の発生母地になることはよく知られており、胃がんや胃過形成ポリープとの関連性も示唆されています。
ところで自己免疫性胃炎とヘリコバクター・ピロリ感染との間に関連性があるのでしょうか。はっきりした結論はでていないものの、本邦では関連性は否定的に考えられています。まだ分からない点も多く、診断や治療についての課題が多いのが実情ですが、内視鏡する上で萎縮逆転現象がみられた際は、胃癌の合併などないか注意深く観察する必要があると思われます。