これまでH.pylori除菌治療についてお話してきましたが、現在のH.pylori除菌治療の現状と問題点について説明してまいりたいと思います。
2000年に胃・十二指腸潰瘍に対しての一次除菌として、PPI、アモキシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法が開始されましたが、当初は一次除菌成功率90%程度であったものの、クラリスロマイシン耐性菌の増加が原因となり、約70%まで低下してしまいました。現在はPPIとは異なった酸分泌抑制薬であるPCAB(ボノプラザン)によるレジメンで、90%以上の高い除菌成功率がみられています。一次除菌が失敗した場合はクラリスロマイシンからメトロニダゾールに変更した二次除菌治療までが保険適応となっていますが、二次除菌治療が失敗した場合はどうしたらいいのでしょうか。
本邦では三次除菌治療として、シタフロキサシン水和物をベースとした報告例がみられており、当院でもボノプラザン、アモキシリン、シタフロキサシンによる除菌治療を行っています。これまに83~93%程度の除菌成功率が報告されており、保険適応外になりますが、高い除菌成功率となっています。
また除菌治療を行った際に副作用が出る方がいらっしゃいますが、多くはぺニシリンによるアレルギーが原因と考えられています。当院ではクラリスロマイシンの耐性菌のことも考慮し、ボノプラザン、メトロニダゾール、シタフロキサシンによる除菌治療を行っていますが、こちらも保険適応外になっています。
除菌成功後もわずかながら潰瘍が再発することはあり注意は必要ですが、ガイドライン上からも除菌後の潰瘍再発予防策は不要となっています。NSAIDsや低用量アスピリン使用時はPPIやPCABによる予防策は必要であり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍になった方は各々にあった対応を行っていくことが望ましいと思われます。