前回からの話の続きで、感染性胃腸炎の発症期間、罹患部位、治療などについて説明したいと思います。
発病までの期間は腸炎ビブリオは1日以内と短く、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌は2~8日と長い傾向があります。サルモネラや病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌以外)、ノロウイルス、ロタウイルスはその中間の1~5日となっています。
罹患する部位によって症状は異なり、小腸が主体であるウイルスや、病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌以外)、腸炎ビブリオは水様性下痢や悪心、嘔吐がみられ、ウイルス性は特に悪心や嘔吐が強くあらわれます。大腸に炎症の首座があるカンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌は発熱や腹痛、下痢が主体で血便がみられることもあります。
治療の原則は対症療法であり、急性期は食事は最小限にとどめ、水分の補給に努めます。脱水症状が強いときは輸液療法を行うこともあります。内服薬については整腸剤などを使用しますが、腸管内容物の停滞時間を延長する止痢薬の使用は極力避ける必要があります。抗菌薬に関しては、大腸に首座がある細菌性大腸炎で症状が強いときは使用も検討しますが、抗菌薬がなくとも自然治癒することも多く、耐性菌の問題もあるため、慎重に判断するよう必要があります。
予防の点においては、ノロウイルスは非常に感染力が強く、アルコールなどの消毒剤への抵抗性が強く、次亜塩素酸ナトリウムであれば十分な消毒ができると言われています。最も有効な予防法は流水と石鹸による手洗いであり、感染している可能性のある食物は十分に加熱して食べましょう。生で食べる食品(野菜や果物など)はしっかり洗いましょう。また感染者の糞便や嘔吐物を介した2次感染で感染しますので、これらの汚物を処理する際は手袋やマスク、ガウンなどを使用し、十分に気を付けてください。