
薬剤が原因の消化管障害について、まだまだいけそうなので最後にまれな疾患について説明したいと思います。
胸やけや嚥下痛があると逆流性食道炎や食道がんなどを疑いますが、心房細動などで使用される抗凝固薬であるダビガトラン(プラザキサ)や骨粗鬆症薬であるビスホスホネートは、ごくまれに薬剤が食道内で滞留し、薬剤の食道粘膜への直接作用などにより粘膜障害を来すといわれています。症状としては先程述べたような胸痛や胸やけ、嚥下痛、嚥下障害などを訴えることが多いものの、無症状である場合もみられます。胃カメラを行うと、ダビガトランでは中部食道に白色の膜様物を認めるのが特徴的といわれていますが、ビスホスホネートは潰瘍や狭窄など多様な所見がみられます。薬剤服用時に十分量の飲水と内服後の座位保持などができていないことが多く、しっかりと服薬指導を行った上で、薬剤の中止とPPIなどの胃薬の内服を行うと、症状、内視鏡所見の改善がみられます。
漢方薬にも消化管障害をおこすことをご存じでしょうか?漢方薬の中で山梔子を含む加味逍遙散、黄連解毒湯、辛夷清肺湯などを内服長期服用すると右側結腸を主体に大腸壁内から腸間膜静脈に石灰化をきたし、腸管循環不全により大腸粘膜が青銅色ないし暗紫色に変化すると言われています。加味逍遙散は女性の更年期症候群に対して使用することも多く、内服してことがある方も多いでしょう。腸間膜静脈硬化症という疾患で、症状としては2/3以上の症例で腹痛や下痢や血便などを認めます。こちらもすべての症例ではないものの、薬剤中止で症状や内視鏡所見が改善すると言われています。
これまで計4回にわたり、薬剤が原因の消化管障害について説明してまいりました。腹痛や下痢、胸やけなどの症状があった場合、薬剤が原因のことがあります。薬をたくさん飲まれている方はお薬手帳を持参し、症状について相談して頂ければと思います。